学術集会における症例報告を含む研究発表に際しての個人情報保護の考え方について

学術集会における症例報告を含む研究発表に際しての個人情報保護の考え方について

倫理問題検討委員会委員長 小杉 眞司
理事長 藤田 潤

「学術集会における症例報告を含む研究発表に際しての個人情報保護の考え方について」下記のように決定いたしました。このガイドラインに従い学会誌、学術集会等での発表を行なうようお願いいたします。 なお、実際に行ってみて疑問点や問題点が出てきた場合には、倫理問題検討委員会委員長 <kosugi@kuhp.kyoto-u.ac.jp>宛にメールでご連絡下さい。必要に応じQ & Aの作製や改訂を行っていきたいと思います。 学術集会における症例報告を含む研究発表に際しての個人情報保護の考え方について2008年10月30日 症例報告は、個別の症例における貴重な情報や経験を共有することにより、医学・医療における知識をより充実させ、他の患者やクライエントに対する医療の向上、医学・医療・福祉の全体の進歩に貢献するものである。症例報告における科学的に的確な記述は極めて重要であり、報告がなされた際には想定されなかった意義が数十年後に見出されることもまれではない。また、症例報告を重視することは、個々の患者やクライエントへのより深い洞察ときめ細かい対応をも生むものであり、目の前の患者やクライエントに対する医療の向上ももたらしうる。したがって、その価値は現在においても決して減じていないといえる。

論文、学会において発表される症例報告では、特定の個人やその周囲の人々に関する診断・治療・ケアなどに関する情報が記載される。当然ながら、まれな疾患や病態の症例における報告が主体となるので、下記のような様々な対応を図っても、個人が特定される可能性を完全には払拭できず、特に本学会における報告の対象となるような疾患においては、その影響が家族にも及ぶ可能性があることから、特別の留意が必要である。

電子ジャーナル化とインターネットの発達により、症例報告の検索も瞬時におこなわれる時代にあって、科学性を担保しながら、症例報告における個人情報をより厳格に保護することは、重要な課題であり、対象者に不利益をおよぼすことがないよう、最大限の努力が求められる。

下記に、日本遺伝カウンセリング学会誌、学術集会における症例報告を含む研究発表に際しての個人情報保護の基本的な考え方についてまとめる。
1. 対象者の特定に繋がりうる科学的に不必要な情報は記載しない。しかし、科学的に正確な記載は学術上の必須条件である。

(1) 記載してはならない情報
対象者の氏名、診療番号、検査番号等、イニシャル、呼び名等。

(2) 例外の状況を除き、原則として記載してはならない情報:
住所
★ 例外の状況:疾患の発生場所が病態等に関与する場合等
★ 例外の場合の記載方法:区域まで記載(都道府県名、政令指定都市名で)
既に他院などで診断治療を受けている場合、その施設の名称、所在地
★ 例外の状況:搬送元、紹介元の情報が不可欠な場合
★ 例外の場合の記載方法:記載可能

(3) 記載してよいが、特定の状況においては記載しないことが望ましい情報
診療科名
★ 記載しないことが望ましい特定の状況:他の情報との照合によって個人が特定される可能性が高くなる場合
(4) 日付の記載は、臨床経過を知る上で必要となる場合が多いので、個人の特定の可能性が高くならない場合は、原則年月までを記載してよい。生年月日の記載もこれに準じる。
(5) 顔写真の提示は必要不可欠な場合に限る。その場合は、個人が特定される可能性を最大限回避するよう留意すること。

2. 研究者は研究発表に関しての同意を対象者から取得することを原則とすべきである。同意の内容、方法、家系構成員など同意対象者の範囲については、研究者の責任において十分配慮をする必要がある。顔写真、全身写真を掲載する場合は、1‐(5)のような配慮を行っても、同意取得は必須の要件である。

3. 日本遺伝カウンセリング学会における研究発表の状況については下記のとおりであり、この状況を理解した上での対応が必要である。

(1) 学会誌の発行部数は2008年現在、約1000部である。
(2) 学会誌は学術集会の抄録を含め、契約者の登録制でアクセスできる「メディカルオンライン」によりWEB掲載される。
(3) 学術集会発表演題名はそのプログラム情報として、フリーアクセスのWEB上に掲載されることが多い。したがって、演題名にも配慮が必要である。
(4) 日本遺伝カウンセリング学会は、遺伝カウンセリングの重要性を社会に訴え、より開かれた学会を目指すため、学術集会において会員以外の参加を歓迎しており、報道関係者や患者・家族などの一般の人々も参加することがある。抄録だけでなく、スライドを含む実際の発表内容に関しても十分な留意が必要である。

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